理事長年頭挨拶(2025年1月)
皆様、新年明けましておめでとうございます。エンジニアリング協会理事長の石倭でございます。 2025年の年頭にあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
振り返りますと昨年は、元日に能登半島地震が発生し多くの方が被災されました。現在でも未だ多くの方が避難生活を余儀なくされている状況に心が痛みます。8月には初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、また、大雨による被害も四国・北陸等々全国各地で頻繁に報告されるなど、災害に関して多くのことを考えさせられる一年となりました。世界的にも、ウクライナ戦争の長期化やパレスチナ情勢の深刻化、米中対立の激化など混迷が一層深まり、気掛かりなニュースも多くありました。ただ一方、過去最高を記録した外国人観光客によるインバウンド需要や、半導体関連の大型投資など、社会・経済全体に活気を感じる年でもありました。
そのような中、当協会も積極的な活動を行いました。7月のエンジニアリング功労者等表彰では、案件の応募数も多く、近年では最も多い合計31件の表彰を行いました。10月にはエンジニアリングシンポジウムを開催いたしましたが、多くの方にご参加・ご視聴頂き、その後に行われたアンケートでの各公演の評価も非常に高いものでございました。会員数も右肩上がりに増え、現在262社となっております。当協会がこのような形で活動できておりますのも、ひとえに、皆様のおかげであります。あらためて御礼を申し上げます。
さて、迎えた2025年、世界情勢は引き続き混沌とする中、この1月には再びアメリカの大統領がトランプ氏に変わり、大きな政策変更が予想され、我が国経済を含む世界経済への影響が大変気になるところであります。また、国内においては、少子高齢化社会の進行、働き方改革の浸透などにより、既に多くの産業を悩ませている人手不足が更に深刻化することが懸念されます。このように、我々を取り巻く経済環境の先行きには不安もありますが、脱炭素化・低炭素化技術の社会実装やレジリエントな社会インフラ整備という2つの大きな社会課題への取り組みは待ったなしの状況です。そして、その担い手となるエンジニアリング産業に対し、世の中の期待がますます高まっていることは、皆様におかれましても日頃感じておられることと存じます。
しかし一方で、その負託に応えなければならないエンジニアリング産業においては、これまで以上に業務の遂行が難しくなっているという事実もございます。先行きの見通しが難しいビジネス環境の中、案件の大型化・長期化あるいは新規性の高い技術の採用要請なども相俟って、リスクがかつてないほど増大し、且つ予見が困難なものになっている、という状況です。
これらの問題の解決は決して簡単なものではなく、個社としての対応には限界があるとの声も多く挙がってきております。そのため、協会としても、顧客業界、政府や関係機関等との関係で何らかの対応ができないかと、望ましいリスク分担のあり方などの検討を進めているところでございます。既に多くの企業・団体の皆様から貴重なご意見を頂戴しておりますが、引き続き幅広い知見を頂ければ幸いです。この問題に関しては、エンジニアリング産業の健全な発展、ひいては待ったなしとなっている社会課題の解決に向けて、粘り強く答えを出していかなければなりません。当協会としても、そのハブとしての役割をしっかりと果たして行く所存であります。
また、言わずもがなではありますが、エンジニアリング産業が発展を続けて行くためには、今後も、志が高く、優秀な若者たちが集ってくれる産業でなければなりません。しかしながら、直近のデータでも、我々の産業の求人倍率の上昇傾向は他産業に比べても顕著であり、先に発行したエンジニアリング白書における当協会会員の回答でも、事業課題として「労働力・人材の確保」が真っ先にあげられている状況です。我々はこうした状況を看過する訳には行きません。エンジニアリング産業の社会的な使命、やりがい、楽しさといった魅力、そしてこれからの成長性を若い世代の方々に理解して頂く努力が急務です。既にそれぞれの企業が工夫して取り組んでおられますが、当協会としても、委員会や部会等で皆様のお知恵を借りながら、エンジニアリング産業の魅力をこれまで以上に発信していく取り組みを考え、実行して行きたいと思います。
以上雑駁なことを申し上げましたが、最後に今年一年の会員企業の皆様の益々のご隆盛を祈念して、私の年頭挨拶とさせて頂きます。
2025年1月
一般財団法人エンジニアリング協会理事長