9.サブタスク9 革新的・先導的技術に関する調査・研究
9.1 研究開発目標
9.1.1 目的
WE−NETプロジェクトの全体構想は、2020年までの28年間を3期に区分して研究開発を行うものである。従ってプロジェクトの有効性を保つためには、将来の技術動向の予測を行い、全体システムの構成技術を常に最適化していく必要がある。
具体的には、各サブタスクにおける当面の開発対象ではない新技術について調査・研究を進め、その技術の重要性・成熟度を評価し、更に必要があれば実現可能性を研究して、調査対象技術が新たな技術開発分野・項目としてWE−NETプロジェクトに必要かどうかを判断することが必要である。
調査対象は革新的・先導的な技術はもちろん、既存の技術であっても改良したり組み合わせたりしたシステムに新規性を見いだせるものも含まれる。
サブタスク9では以上のような観点から新技術を調査、収集、評価し、そして必要ならば更に研究をすることにより、WE−NETプロジェクトの方向性に有益な示唆・提案を行い、研究開発に資することを目的とする。
9.1.2 第I期の目標
第I期においては前項の目的を達成するため、以下の項目について調査・研究を行う。
(1) 革新的・先導的技術の調査・評価
WE−NETを構成する技術は再生可能一次エネルギー、水素の製造、輸送・貯蔵、利用等多岐にわたる。西暦2020年までには、これらの構成技術に現状の開発対象から外れている革新的・先導的技術が登場してくる可能性が大いにある。
サブタスク9ではこれらの新技術の動向について調査する。また、収集した新技術について、有用性・成熟度等を総合的に検討・評価することによりWE−NETの方向性に示唆・提案を行う。
(2) 革新的・先導的技術の研究
本研究において調査・評価された新技術のうち、さらに詳細に実現可能性を研究する必要があると判断されたものについて、必要最小限の調査および基礎的研究を行う。
(3) 在来型技術の調査・評価
在来型技術においても、改良やその組み合わせのシステムに新規性があり、有用であるものは調査・評価の対象とし、前項同様に検討・評価する。
(4) 新規開発分野・項目の検討
前項までの調査・研究により得られた有望な新規技術の動向をもとにして、将来の新規開発分野・項目の必要性の有無を検討する。
(表9−1−1 第I期 全体計画)
9.2 平成8年度の研究開発成果
9.2.1 革新的・先導的技術の収集
本年度までの新技術の提案状況を表2−1に示す。
(表9−2−1 提案の状況)
<新規提案技術>
- Thermo-Electrochemical Hydrogen Generation(SRI International)
- 直接太陽エネルギーによる水素製造(豊橋技術科学大学)
9.2.2 革新的・先導的技術の評価
昨年度までに確立した評価手法を用いて、平成7年度までに得られた23件の提案の評価を行った。
(1) 評価手法
重みの決定:階層化意志決定法(Analytic Hierarchy Process)
評価項目 :【技術的意義】 …… ポテンシャル、性能、新規性
【研究開発・政策上の意義】…… コストパフォーマンス
WE−NETとの整合性
国際性(R&D)
【社会的意義】 …… 環境負荷、社会の受容性
社会的な波及効果
採点 :5段階評価
| 評価記号 | 点数 |
極めて良い | ☆ | 10 |
良い | ◎ | 8 |
普通 | ○ | 5 |
悪い | △ | 2 |
極めて悪い | × | 0 |
得点 :得点=Σ(重み×採点) …… 10点満点
(2) 技術分類
本研究で取り扱う新技術は多種多様な分野の技術になる。全く違う性質の新技術を比較・評価する必要が生じるため、評価項目間の「重み」の決め方が一律であると技術分野によっての優劣が生じる可能性がある。
そこで本研究では、評価技術を次のように分類し、異なる「重み」を採用することにより各提案技術の性質に適合した得点が得られるようにしている。
<技術分類>
I 型:短期小規模型 |
II 型:短期大規模型 |
III 型:長期小規模型 |
IV 型:長期大規模型 |
<境界線>
短期、長期 | : | 西暦2005年から2010年 程度を目安とする。 |
小規模、大規模 | : | 1000kW程度を目安とする。 |
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表9−2−3 評価技術の分類
| 小規模 | 大規模 |
短期 | I 型 | II 型 |
長期 | III 型 | IV 型 |
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(3) 評価結果
平成7年度までの提案技術について評価を行った結果、次の提案が高く評価された。
(表9−2−4 評価結果(抜粋))
9.2.3 革新的・先導的技術の研究
前項の検討で得られた評価結果をもとに、平成8年度の概念検討の実施を計画した。
本研究の委員会において検討の結果、表2−5に示した4件のテーマおよび依頼先が決定され、概念検討を実施した。
(表9−2−5 平成8年度に実施した概念検討)
9.2.4 新規開発分野・項目の検討
新規開発分野・項目を検討するため以下の手順で検討を開始した。
- 現状で考えられる開発分野・項目の整理
- 提案技術の整理
- 技術分類の検討
- テーマごとの実状把握
- 新規開発分野・項目の把握
9.3 今後の進め方及び課題(平成9年度の計画)
(1) 革新的・先導的技術の調査・評価
今年度までに引き続き、将来、WE−NETプロジェクトの開発対象となりうる革新的・先導的技術の調査・収集・評価を行う。
次年度以降は評価体制の確立を受けて新技術を募集する方策についても検討する。
(2) 革新的・先導的技術の研究
評価の確定した技術の中から適切なものを選定し、概念検討を実施する。
(3) 新規開発分野・項目の検討
既存の開発分野・項目を出発点に将来WE−NETプロジェクトに必要な技術とは何かを検討する。